リトアニアの総選挙・国民投票の裏側で

2012年10月14日、リトアニアで総選挙と同時に原発建設の是非について国民投票が行われました。国民投票についてはこちらのサイトが精力的に報告されています。
リトアニア「原発」国民投票特集
http://kokumintohyo.com/lietuvos
国民投票が投票率50%を超えて成立し、その上で反対票がが60%以上を獲得したことが注目を集めていますが、その裏でこのような事態が生じていました。
  1. その前月2012年9月26日、ベラルーシのジャーナリスト、タツィアナ・ノヴィコヴァ(Tatiana Novikova, Таццяна Новiкава)と、ベラルーシの新原発立地アストラヴェツ(астравец)現地で反原発活動を続けているニコライ・ウラセヴィチ(Nikolai Ulasevich, Николай Уласевич)の二人が、リトアニア入国の際に国境で「リトアニア国内あるいは他のEU国内の秩序・治安を乱す可能性がある」という理由で入国拒否を受ける。 
  2. 今月10月2日、ロシアの飛び地カリーニングラード州の原発計画に反対しているミハイル・コスチャエフ(Michael Kostyaev, Михаил Костяев)とその同僚二人がジュネーブで開かれる会議に参加するためにシェンゲン・ビザを申請したところ、シェンゲン情報システム(SIS)によって「リトアニアへの入国を認めない」という理由で申請が却下される。 
このため、旧ソ連・非EU国の反原発活動家 5人がシェンゲン圏全体に入れない状態が続いています。二つのケース両方ともかなりの無理があります。

ベラルーシの場合、例えばタツィアナ・ノヴィコヴァは昨年2011年12月にリトアニア・ヴィリュニスで開かれた反原発活動の国際会議
にゲスト・スピーカーとして招待されて参加するなど、二人とも何度かリトアニアには入国しています。今回の目的はリトアニアの反原発グループと共催の、リトアニアの国会で開かれる会議に参加するためで、正式な招待も受けていました。
詳細記事をこちらに載せています(英語)。
http://energiasynergia.blogspot.com/2012/09/antinuclear-activists-from-belarus.html

カリーニングラード州のロシア人の場合、ジュネーブで開かれる会議
Joint Meeting on public participation in environmental decision-making: focus on strategic environmental assessment
は今月10月29, 30日に開かれるもので、リトアニアとは全く関係ありません。この会議に正式に招待されて、カリーニングラード州のドイツ領事館でビザ申請をしたところ(スイス領事館がないため)「リトアニアへの入国を認めない」という理由で申請が却下されました。スイス領事でもドイツ領事の判断でもなく、リトアニア政府が横槍を入れた形です。

若干混乱する方もいるかもしれません。シェンゲン圏内の国境では入国審査が実質無いので、一度シェンゲン圏に入ってしまうと後は域内を自由に行き来が出来ます。なので、本人たちにその気がなくても、ジュネーブ入りを許してしまったらリトアニアにも入られてしまう、という事態を恐れてシェンゲン圏全体への入域を拒否したと取れます。リトアニア政府がかなり強硬な態度を取った事がわかります。
本人の声明を含めた詳細記事をこちらに載せています(英語)。



これら三国の反原発活動家達は公然と協力的に活動しているため、リトアニア政府が国民投票前に外来者による扇動を恐れ」、その分断を図って取った措置だろうというのが大方の見方です。
そうしたリトアニアがメンバー国であるEUが今年のノーベル平和賞受賞というのもかなり皮肉に捉える事ができますが、今回の総選挙で与野党が逆転したのでこれからどのような対応がなされるかに注目しています。